隔離病棟のゆかいな仲間たちシリーズ2「柳・ザ・タイムスリップ」

シリーズ1は変身する横井くんってことにしておいて、
第2弾はタイムスリップが自在に出来る柳さんを紹介する。
さん付けなのは、敬意を込めているから。


柳さんは、時間を止めることは出来ないが、
時間を自由に進めたり戻したり出来て有用だ。


彼の部屋内だけではあるが、時間を自在に操れる。
部屋を出たら、特にこれといった特徴もなく、
会話もきちんとこなす、頭脳明晰な四十路間近の紳士だ。
明治大学卒。
(なぜ精神病院、しかも隔離病棟なんぞに存在しているのか謎で、
病院七不思議の一つになっている。)


いつもの調子で彼の部屋に遊びに行くと、
彼ともう一人、全共闘クサい若者がいる。いかにも60年代的な出で立ちだ。
この病院は戦後すぐ建てられた。隔離病棟もその時から現存している。
故に60年程度前までならば、そのまま病室の造作である。


相手はどうも精神錯乱状態に見受けられ、
何やら会話にならない会話を柳さんと楽しんでいるようだった。
俺は「ソ連は崩壊しますよ」と笑顔で告げた。
しかし、神経衰弱なのか、特に反応もなく、
柳さんも適当に彼の独り言に付き合っているだけの様子だった。


柳さんは、終始ノートにメモをとっている。
時代を巻き戻したり巻き進めたりしながら、
時代の記録を取るのが彼の趣味だ。
ノートは時代別に分けられており、数十冊も用意されている。


時々外部から彼の噂を聞きつけた人間が来るが、
彼は隔離病棟以外の人間には決して心を開かない。
一般病棟の人間や職員に対してもだ。
もし無理矢理部屋に入ろうとするならば、
瞬時に恐竜時代にして、ヴェロキラプトルみたいな肉食恐竜に狩らせるのだ。
先月もラプトルっぽい恐竜に殺められた一般人が内臓ぶちまけられていた。


とりあえず、全共闘の気違いクンは全くいじりがいがなく、退屈だ。
俺は「では」と言い残し部屋を出た。


(彼の能力に関しては沢山エピソードがあり、後日書きます)