花瓶

廊下に花瓶がある。
台などに乗っていたり、
鼻が刺さっているわけでもない、
ただの花瓶。
花瓶本体。


ある夜、
廊下を渡っていると花瓶からうめき声が聞こえる。
近付けば近付くほど、うめきはドロのような生々しい形になる。


花瓶を持ち上げた。
そして空いていた窓から放り投げた。
花瓶は地面に落ちた。
そして割れなかった。


割れなかった。
なぜか。
地面が柔らかかったからか。
否。
花瓶が固かったからか。
否。


実は、花瓶は柔らかかったのです。
地面に落ちて、ポニョーンと跳ね返って戻ってきやがりました。
反発係数はどうなるんでしょう。
物理法則を無視しないで下さい。


それから一週間はうめき声が聞こえなかったんだが、
さっきうめき声がした。
だから、今から確かめてくる。
今度は衝動的に割ることはしない。
陰湿な方法で彼女を問いただす。